アシュケナージの指揮でマーラーの第一交響曲を聴きました

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ウラジーミル・アシュケナージの指揮、シドニー交響楽団の演奏でマーラー交響曲第1番を聴いてます。

 

温和でふっくらとした音響が特徴的で、時として恰幅よく音楽が展開していきます。歌心にも満ちていて、暖かい春を謳歌するかの様です。この点からは、作曲者の純朴な詩情を余す事なく表現するアシュケナージの姿勢が窺えますね。

 

打楽器や金管楽器が登場する部分では、巨人の様な大きさを感じさせますが、巨人は巨人でも穏やかに見守ろうとする慈悲深さをこの演奏では表れています。指揮者自身の人情味がハッキリとにじみ出ているとも言えましょう。

 

時折、曲の速度の上がる時もあり、その点からは春の穏やかな側面だけでなくだけなく、活気をもって生き物や人々が動こうとする一面も表現しています。単に温和さだけを表さずにちゃんと起伏を付けて展開していく所は聴き手を飽きさせません。

 

ちなみに、この第一交響曲には巨人という標題がありました。これはジャン・パウルの小説『巨人』に由来するもので、その内容は主人公が様々な経験を経て成長していくという筋書きです。しかし、これはあくまでも聴き手が理解しやすくする為の後付けに過ぎません。聴衆の間違った認識を避ける為、この標題をマーラーは削除したのです。ただ、この曲自体は規模も大きくて静かな所やテンポの速い箇所があり、短調の暗い部分もあれば長調の明るく進みます。そういった紆余曲折がある為、巨人という標題は渾名としてなら悪くは無いかなと私は思っています。

 

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