シューベルトのヴァイオリン協奏曲をクレーメルのソロで

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シューベルト作曲のヴァイオリン協奏曲ニ長調を聴きました。演奏はギドン・クレーメルのヴァイオリン、ヨーロッパ室内楽団です。

 

モーツァルトの影響が濃く、音の作りや和音もよく似ています。しかしながら、シューベルトの歌心ある詩情は奏でられていて、素朴な味わいが堪能できます。一つ一つの音も柔和でサラサラと流れる春の小川の様です。その上、淑やかながらも晩年の交響曲に繋がる恰幅の良さと多少のズッシリとした響きもあり、作曲者の個性がこの管弦楽を用いた曲にも現れています。

 

ヴァイオリンの独奏の方も単に伸び伸びと歌っているだけでなく、時として力強く凝った技巧を聴かせることもあります。この点からは、クレーメル自身の鮮やかに奏でる個性を感じさせますし、シューベルト自身この楽器の扱いが上手かった事も伺わせます。単なる技術のひけらかしにならずに、人間の自然な感情をサラッと表しているのです。

 

ちなみに、このヴァイオリン協奏曲は作曲者が19歳の時に兄のフェルディナンドの為に作られました。かの有名な「魔王」と時期的に近く、この音楽家が音楽的にも個性を確立する頃です。10分程度で短くテンポの遅い序奏と速度の速い部分の2部構成となっていて、シューベルト唯一の協奏曲です。フェルディナンドは郊外で孤児院の教師でヴァイオリンも弾いてた為、この位の規模がちょうど良いとシューベルトが判断したのでしょう。オーケストラの編成も2管編成ですが、管楽器とティンパニが弦合奏への付随的な音しか出していません。元々弦楽四重奏と独奏ヴァイオリンの曲だった印でもあります。それから、この時代はヴァイオリン協奏曲というジャンル自体が少なく、あまり流行っていませんでした。そういった時代的な背景や兄の背景が含まれた秘曲です。

 

 

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