ボッケリーニのギター五重奏曲「ファンダンゴ」を聴きました。
ヨーロッパ・ガランテというイタリアの古楽器団体による演奏でボッケリーニ作曲のギター五重奏曲のファンダンゴを聴いてます。
ふくよかかつ情緒的に彩られた牧歌調の第1楽章にはうっとりさせられます。
しみじみとしたギターの調べも癒されますし、チェロの技術を極めヴィルトゥオーソの先駆けとなったボッケリーニの別の側面が表れています。
第二楽章以降もテクニックと長閑に歌うような情緒を器用に両立させながら曲を展開できています。
最終楽章のファンダンゴと呼ばれる楽章こそが、この曲の最大の特徴となっていますし、副題の由来にもなっています。陰影をチラつかせながら、太陽の燦燦とした内なる情熱を秘めた5つの弦楽器が対等に個性的にリズミカルな踊りの調子で音を出しています。シャンシャカとしたギターが特に際立ちます。
なんとこの演奏では、タンバリンやカスタネットなどの打楽器まで添えられていて、イベリア半島の陽の元で踊り子がダンスを披露している様子まで連想します。
この点は古典派の音楽家の中ではボッケリーニ特有で、彼の場合はスペインの伝統的な舞踊や音楽も交えています。その為、クラシック音楽という伝統の中に民族特有のものを盛り込んで作曲したという意味では、ドボルザークやムソルグスキーなど後の国民楽派の流れの先駆けにもなったと言えるでしょう。
スペインの王室に仕えて現地の音楽に慣れ親しんだだけのことはあるなと思います。
弦楽五重奏曲ト短調Op.24-6もこのアルバムには含まれています。
ファンダンゴ五重奏曲と同じように影のある情緒とテクニカルなスペインの熱気を混ぜた作品です。因みに、ボッケリーニの弦楽五重奏はヴァイオリン二本・ヴィオラ一本・チェロ二本と特有の編成が多いです。その理由はスペインの王室で音楽に親しんでいた王族が元々4人でヴァイオリン2人・ヴィオラとチェロが1人ずつの弦楽四重奏をやっていた為です。尚且つそこにチェロ演奏で名高い音楽家だったボッケリーニが仕えて、作曲と演奏をして音楽を聴く楽しく奏でていたとの事。
更にこの演奏は古楽器な為、当時のボッケリーニとその周辺の人たちがまさにこの音で音楽を嗜んでいた事を思うと、雅な感じてとてもお洒落です。
最後のギター五重奏曲「マドリードの帰営のラッパ」は情緒も勿論ありますが、作曲者の持ち味のテクニックを弾けさせていて、しかも威厳に満ちています。この曲のタイトルの由来は最終楽章においてスペインの軍隊がマドリードの街を歩いて帰ってくる様子を描写している為で、この曲を正確に把握して表現する事は他国の人間には無理だという事で生前には出版されなかったのです。
短いとものの、第1楽章終わり頃のギターの深いソロもとても印象的でした。
ボッケリーニはモーツァルトなど他の古典派の音楽家と比べるとマイナー扱いになりがちですが、彼の作品には珠玉の名曲が少なからずあり、これからどんどん有名になったり演奏されることを願ってやまないです。
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