内田光子さんのピアノでモーツァルトのピアノソナタイ短調を

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内田光子さんのピアノでモーツァルト作曲のピアノソナタ第8番イ短調を聴きました。

 

モーツァルトにしては珍しい短調の作品です。私としては、彼の歌劇「魔笛」の夜の女王のアリアのようにバリバリの暗さを伴った劇的な疾走感を連想しました。第三楽章の第一主題ではそれが顕著です。しかし、第一楽章で彼女はこのソナタを温かみのある調べで、悲痛さを伴わずにモーツァルトの影の側面をそっと奏でています。ピアノという室内向けの側面を前面に押し出しているとも言えましょう。

 

それから、とても細やかに音のグラデーションを紡ぎ上げていて、いかにモーツァルトが卓越した作曲家であると同時にお洒落な音楽家であったかをまざまざと思い知らされます。微妙な音の強弱の対比を重ね上げては、ハッキリと分かる音色の違いを聴かせます。さっきはそっと囁いてたが今は強く劇的にやっているなと聴いていて思いました。第一楽章での奏法と第三楽章のそれが良い例です。

 

ちなみに、この曲を作曲していた頃のモーツァルトは1777年にパリで仕事を探していましたが、思うように見つからない時期でした。更に、その翌年には母親も亡くしています。その様な不満や悲しみが相まって、サッと駆けるこのソナタが生まれたと言えます。第二楽章の緩徐楽章では、穏やかに母との思い出を回想し、そっと哀悼するかの様な優しさを感じさせました。

 

 

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