ベルリンフィルの管楽器アンサンブルでベートーヴェンのマイナーな室内楽を

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今年はベートーヴェンの生誕250年です。せっかくなので、彼の無名ながらも良い作品を取り上げます。

 

今回は、ベルリンフィル管楽器アンサンブルによる演奏で二本のオーボエと一本のイングリッシュホルンによる三重奏曲を聴きました。

 

三つの管楽器は共に歌心に満ちていて、長閑さと伸びやかさを感じさせます。

 

第一楽章のタターンという始まりこそ堂々としていて、ベートーヴェンらしさがあるものの、ディヴェルティメントの様な気さくな明るさと純朴さで溢れています。

 

曲を作る側も演奏をする側も単純に音楽が好きで楽しそうにしている様子が目に浮かんでくる程です。

 

え?こんなに明快で音が澄んでいる曲がベートーヴェンの作品?と耳を疑ってしまいそうな室内楽となっています。オーボエは純粋に綺麗な音を立て、イングリッシュホルンも少々濁った音色で、その個性を活かしてしみじみとした味わいを漂わせています。

 

それもその筈、この三重奏曲は1795年に作曲と、25歳の若かりしベートーヴェンの作品です。しっかりとソナタ形式は守られているなど、いかにも古典的でハイドンモーツァルトらの先人の影響の色濃い作品であります。作風自体は習作の域を出るか出ないかの作品であります。

 

ですが、1795年の作曲者と言いますと、耳を悪くする数年前の作品という事もあり、芸術家としての強い使命感でもって数々の傑作を生み出していく前兆も見せています。その証拠に、イングリッシュホルンを珍しくベートーヴェンは起用していて、先にも後にも無い様な編成でこの室内楽曲を作り上げました。その上、彼の曲でイングリッシュホルンを用いた曲は全然聞きませんし、彼の管弦楽の作品においてもその管楽器は殆ど使われません。

その上、よくよく聴くと後の交響曲第一番や第二番の様な力のある躍動感を見せる事もあり、その傾向はこの三重奏曲の第四楽章で現われています。

 

要するに、この曲でベートーヴェンは先代の影響を大きく受けつつ、少しずつ自分の個性を取り入れています。新たな気鋭の入った彼のの隠れた佳作とでも言いましょうか。

 
購入はこちらから。こちらはベルリンフィルの団員の録音ではありませんが、ご容赦ください。