ガーディナーの指揮でグルックのバレエ音楽の「ドン・ジュアン」を聴きました
ジョン・エリオット・ガーディナー指揮、イングリッシュ・バロック・ソロイスツの演奏でグルック作曲の「ドン・ジュアン」を聴いてます。
モーツァルトのあの歌劇と同じ題材です。
艶も含めて豪華絢爛に管弦楽をよく鳴らしています。
音の静かな所でもふくよかに響かせていて、当時の聴衆たちが素養の高かった事に合わせて実に上品な芳しさをも醸し出す演奏となっています。ガーディナーがバロック音楽の演奏の為にわざわざオーケストラを編成して、その研究をしっかりと行っただけの事はあります。グルックの持ち味の劇場に見合った壮麗さとそれに由来する美を昔ながらの響きで忠実に表現しているかのようです。
なお、このバレエは1761年に成立、オペラ改革で有名な歌劇「オルフェオとエウリディーチェ」の完成の一年前です。
時代としてはペルゴレージが打ち立てた前期古典派の音楽から始まってエマヌエル・バッハがそれを発展させようとしている事です。グルックは彼と同世代です。エマヌエルが多感様式で、様々な楽想やら雰囲気の変化を豊かにして器楽曲を主に作っていました。それに対してグルックはオペラやバレエといった劇場音楽でそれを取り入れようとしていましたし、このバレエ音楽でも主人公を始めとして様々な人物の感情や行動を事細かに描けていると思われます。楽想の変化やその起伏もエマヌエル・バッハに負けていません。グルックは当時の劇場音楽の作曲家としては「オルフェオ」以前から先進的だったのではないでしょうか。この曲の終わりでも、ドン・ジュアンが最後に悲惨な目に遭い、その描写でも劇的で短調ならではの多少の鋭さも込めて紡ぎ出されています。所々でトロンボーンが一つずつ音を出すのも苦しみを痛烈に表すのに効果を出しています。
それから、そんな作風はモーツァルトにも影響を与え、歌劇「ドン・ジョバンニ」という形で更に顕著に、より個性的にさせているのではないでしょうか。
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