フルトヴェングラー作曲の声楽曲を聴きました。

f:id:klassischemeister:20190919003134j:plain

フルトヴェングラー作曲のドイツリートと合唱曲の全集を聴いてます。

 

彼のドイツリートはどれも若い頃に作られたものばかりです。それらは典型的なロマン派のドイツリートです。アルフレート・ヴァルターのピアノ伴奏は伸び伸びと澄み切っていて、テノールのグィド・ピカルは上流の穏やかな流れの川のような清冽さで叙情的にすっきりと歌っています。

 

ただ、フルトヴェングラーの歌曲は良くも悪くも深みには欠けてしまうため、埋もれがちになってしまいます。シューベルトなど他にもドイツリートを得意とし、優れた作品を残せている作曲家と比べると見劣りしてしまうのでしょう。

 

深みがさほど無い分、純粋に聞き流して癒しを求めるには、フルトヴェングラーのドイツリートは捨てがたい作品となってます。

 

ドイツリート集の後は合唱曲集となっています。これらも典型的なロマン派の音楽で、同世代の作曲家と比べると時代遅れと見做されてしまい、埋もれてしまったと思われる部類です。

ドイツ語の合唱曲が2曲、ラテン語のテデウムが1曲入ってます。オーケストラ伴奏です。

 

フルトヴェングラーといえば壮大かつデモーニッシュなロマンで指揮をする演奏で有名です。このドイツ語の合唱曲には規模の大きさはあります。しかし、この曲にも深みはそこまで無く先のドイツリートと同じく叙情的に曲を展開し、ドイツ語の歌詞を味わいながらも天を讃える温かさに包まれています。

 

続いて、ドイツ語の賛歌はというと長いオーケストラによる前奏が続きます。5分半経ってからテノールのソロが入り、合唱も続きます。ティンパニの音には一定の力強さもあり、その音が強過ぎない分、縦へ縦へとドンドン構築していくかのような壮大さが感じさせられます。それと同時にテンポの遅い部分では合唱は包み込むような優しさで聴き手を癒します。金管楽器群は時折オルガンの様な音を出し、弦楽器と木管楽器は合唱と溶け合う様に響かせています。曲の後半の急に速度が速くなる部分ではデモーニッシュなメロディーも登場、フルトヴェングラーの指揮の個性が曲にも表れます。ソプラノ及びアルトソロも登場し、合唱と弦楽器群により静かに曲は終わります。

 

最後の収録曲はテ・デウムでフルトヴェングラー作曲の楽曲の中では最大級の規模の編成を誇ります。ソプラノ・アルト・テノール・バスのソロが1人ずつ、通常のオーケストラのに加えてオルガンもオーケストラの一員として登場です。

 

トランペットのファンファーレとティンパニの合奏で曲が始まり、合唱が続きます。それからテノール・ソプラノのソロが暫く登場、その後に合唱が続きます。これまた叙情的な美しさを讃えてから、時折駆け巡る様な速さのオーケストラの伴奏で天へと垂直に向かうかの様な流れで合唱が歌います。

 

ティンパニに関しては幅広い夜空を思わせるような広大さで綺麗に鳴らせています。オーケストラの音楽に関してはというとテンポの速い部分では短い時間に音を多めに詰め込んでいて、マーラーの影響も若干感じさせました。その点では後期ロマン派の影響も受けていたとみなせます。

 

この曲の後半ではソプラノ・アルト・テノール・バスの四重唱が優美に歌い、締めの部分では合唱との掛け合いもしています。フルトヴェングラー自身も敬虔な人の声の美でもってソリストと合唱を響かせて神への誓いを音楽にしたとも言えましょうか。

 

購入はこちら。